研究概要 |
カブトガニ血球細胞沈査から、Sephadex G-50,S-Sepharose、およびChitinを用いたカラムクロマトグラフィーにより、新規のキチン結合タンパク質を精製した。NH_2-末端配列分析の結果、当グループがすでに見い出しているTachystatinと配列類似性が見られたため、TachystatinをTachystatin A(配列によりA1,A2に分けられる)とし、新規のキチン結合タンパク質をTachystatin Bと命名した。精製したTachystatin Bは逆相HPLCにより2種のアイソタンパク質に分離され、それぞれTachystatin B1、B2(存在比3:2)とした。Tachystatin B1、B2ともに42アミノ酸残基からなり、2、3番目にアミノ酸置換が見られるほかは、同一の配列であった。配列より推定される分子量はTachystatin B1=4,912.62、Tachystatin B2=4,940.67であり、質量分析の結果と良く一致した(それぞれ4,912.69および4,941.17)。Tachystatin Bはグラム陰性菌、グラム陽性菌、真菌に対して抗菌活性を示し、特に真菌に対する抗菌活性は他のカブトガニ抗菌タンパク質と比較して非常に強かった。さらに、Tachystatin Bはリポ多糖(LPS)感作赤血球に対して溶血活性を示し、Polyethylene glycol #1540、Dextran 4などの糖により溶血が阻害されることが明らかとなった。従ってTachystatin Bは赤血球膜上のLPSと結合し、直径約2.4mmのporeを形成すると予想された。以上のことから、Tachystatin Bは、TachycitinやBig Defensinと同様にカブトガニの生体防御において重要な役割を果たしていると思われる。
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