研究概要 |
本研究では肝臓での薬物代謝反応(第1相及び2相反応)を試験管内で再構成することを目的として、薬物酸化系酵素(NADPH-P450還元酵素:CPR及びチトクロムP450:CYP)と薬物抱合酵素(UDP-グルクロン酸転移酵素:UGT)を含む発現系の構築を行った。 (1)COS細胞を用いたラットUGT分子種の発現系の確立 肝臓ミクロソームで発現しているUGT1(A1,2,3,5,6,7)及びUGT2(B3,6,12)の計9種の分子種の発現系を構築し、それぞれをCOS細胞に導入して基質特異性の検討を行った。UGT1A1はビリルビン抱合を行う唯一の分子種であることが示された。p-ニトロフェノールの抱合化にはUGT1ファミリーのうちPhenol-clusterに属するUGT1A6,1A7とUGT2B3,2B6,2B12が関与し、ステロイドホルモンであるテストステロンはUGT2B3及び2B6によってのみ抱合化をうけ、発現量あたりの活性値には差異がみられた。このように肝臓ミクロソームにおける薬物抱合能はUGT分子種の存在比、その基質特異性及び比活性によって決定されることが示された。 (2)酵母を用いたCYP,CPR及びUGT発現系の確立 薬物代謝過程における連続的な変換反応(水酸化、抱合化)を解析するために、酵母CPR、ラットCYP1A1及びUGT1A6cDNAを自律複製型あるいは染色体型ベクターに挿入し、それぞれを酵母に導入して7-エトキシクマリン(7EC)の水酸化及び抱合化反応の解析を行った。単独発現系においては特異的抗体によりそのタンパク発現が確認され、水酸化体あるいは抱合体の生成がみられた。それぞれの混合測定系においてはCPR-CYP1A6による水酸化体の蓄積後、UGT1A6による抱合体の生成が検出された。このように動物細胞及び酵母での発現系を用いることにより薬物代謝における連続的な代謝過程を再構成することができ、異なるUGT分子種との組み合わせにより多種にわたる薬物の体内動態を解析することが可能であることが示された。
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