研究課題/領域番号 |
09558091
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
藤原 敏道 横浜国立大学, 工学部, 助教授 (20242381)
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研究分担者 |
日元 徹 日本電子, 分析機器技術本部, 統括次長(研究職)
阿久津 秀雄 横浜国立大学, 工学部, 教授 (60029965)
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キーワード | 固体NMR / 安定同位体標識 / タンパク質高次構造 / 二面角 |
研究概要 |
本研究の目的は、固体状態を対象にできる多次元NMRによって原子間距離や二面角情報を得る方法を開発し、タンパク質の高次構造解析に応用することである。 今年度の研究では二面角などコンフォメーションを決める角度情報を得る方法を開発した。この方法は、核スピン間で磁化を移動させることを通じて、異なる原子の核スピン相互作用の相対的な配向を決めて角度情報を得ようとするものである。この実験では試料回転条件でCH双極子相互作用を測定する新しいパルス列を用い、3次元NMRスペクトルを測定する。これを^<13>Cで標識したバリンに適用し、タンパク質側鎖の二面角に相当する角度を求めた。中性子線結晶解析の結果と比較すると、二面角χは3度程度の精度で一致しているという結果が得られた。これらの方法は、タンパク質の二面角φ、ψの決定に応用できる。 固体NMR測定による高精度な構造解析のためには、分子は試料中で一様な構造をとっている必要がある。固体試料を得る条件を検討するために、さまざまな方法で試料調製した分子量約5万のTF_1-ATP合成酵素βサブユニットと基質ATP複合体について、そのATPのリン-31固体NMRシグナルを測定した。この解析から、凍結させて固体試料を作る場合には水の結晶化にともなうタンパク質の構造の乱れを抑えるために急速凍結法やトレハロースなど凍結防止剤の使用が有用なことを明らかにした。また、凍結乾燥で試料調製を行う場合でも、これらの方法が有効であった。 以上のように^<13>Cや^<15>Nで多重標識した固体状態のアミノ酸などについて多次元固体NMRにより二面角など構造情報を正確に得られることが実験的にわかった。タンパク質の試料調製法も明らかになってきた。これによって、固体状態でさらに複雑な生体分子についてその構造を解明するための方法論的な基礎を確立することができた。
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