研究概要 |
本研究の目的は、固体状態を対象にできる多次元NMRによって信号帰属,原子間距離や二面角情報を得る方法を開発し、タンパク質の高次構造解析に応用することである. 今年度の研究では,同種核間で高い効率で磁化を移動する方法を開発した.これにより信号帰属や二面角測定などのための多次元NMRスペクトルの感度を向上させることができる.この方法の原理は,試料回転と同期させた180°パルス列を照射することで双極子相互作用の配向依存性を減らして磁化移動を行うものである.この方法を^<13>C完全標識アミノ酸に適用して2割程度,効率がよくなることがわかった.また,この方法以外にも選択励起などをすることで多次元NMRの感度を向上さる方法についても検討した. また,15アミノ酸残基からなるペプチド,マストパランの特定の2箇所を標識して固体NMR回転共鳴実験を行い距離測定を行った.この結果を構造エネルギー計算と組み合わせて解析することにより,5番目から8番目までの残基についてはαヘリックスに近い構造を取る事がわかった.さらにまた,このマストパランの全構造を決めるために,^<13>Cと^<15>Nで完全標識した.このためにペプチドがヒスチジンタグをもちユビキチンと融合タンパク質をつくる系を利用して,大量発現を行い約10mgの試料を得た.この量は固体NMR測定を行うには十分なものなので,この発現と精製法が固体NMR用試料調製法として用いれることがわかった.今後,この試料をタンパク質モデルとしてより複雑の系の構造解析法を開発する予定である.
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