研究概要 |
神経細胞における糖脂質の発現は、我々により開発された一連の抗体を用いた解析の結果、各々特異的であることが示唆されている。本研究は、これら抗糖鎖抗体の応用の一環として糖鎖抗体遺伝子の導入によるトランスジェニックマウスの作製を目的とする。本年度の目標は、高力価の抗糖脂質抗体(lgM)を産出するトランスジェニックマウスの作製とその神経症状の解析であるが、最終的には、lgGを含めた抗糖鎖抗体産生による自己免疫性神経疾患のモデルマウスの作製にある。一連の抗糖鎖抗体の中より、高力価で、比較的結合特異性の低い、具体的には、すべてのb系列ガングリオシド(GD3,GD2,GD1b,GT1b,GQ1b)と強く反応するが、その他の糖脂質(a系列やアシアロ系列)とは反応しない抗体(43-20,lgM)(未発表)を選択した。この抗糖鎖抗体産生ハイブリドーマ株由来のmRNAよりRT-PCR法を用いて目的とするVH鎖とVL鎖のcDNAをクローニングした。このcDNAの情報を基にゲノム遺伝子の単離を行い、Fc部分の膜貫通ドメインを持つものと持たない遺伝子組み換え体を作製した。これら抗体遺伝子をX63(lg非産生B細胞株)に導入して、抗体産生をELISAにて確認した。常法にしたがってトランスジェニックマウスを作製し、9ラインのfounder候補を得た。現在、F1世代を解析中である。このトランスジェニックマウス作製後、マウス病態を詳細に観察、解析する。その後、同じ結合特異性を持つIgG型トランスジェニックマウス、続いて結合特異性の高い抗ガングリオシド抗体遺伝子導入マウス、さらには、ガングリオシド以外のスファチドや糖蛋白質糖鎖抗体遺伝子の導入マウスの作製を予定している。
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