研究概要 |
糖鎖抗体遺伝子導入によるトランスジェニックマウスの作製に成功した。最初に、すべてのb系列ガングリオシド(GD3,GD2,GD1b,GT1b,GQ1b)と強く反応するが、その他の糖脂質(a系列やアシアロ系列など)とは反応しない抗体(43-20,lgM)を産生するハイブリドーマ株由来のmRNAよりRT-PCR法を用いて目的とするVH鎖とVL鎖のcDNAをクローニングした。このcDNAの情報を基にゲノム遺伝子の単離を行い、Fc部分の膜貫通ドメインを持つもの(Fu11 type)と持たないもの(Secretion type)の遺伝子組み換え体を作製した。これら抗体遺伝子を×63(lg非産生B細胞株)に導入して、抗体産生をELISAにて確認後、常法にしたがってトランスジェニックマウスを作製した。現在までに、樹立されたFounderの数は、Fu11 typeで7匹、Secretion typeで12匹である。Founderは全て外見的に病的所見が認められなかった。またFounderのGD3に対する血中抗体価はいずれも、GD3を免疫して得られた抗体価と同程度に高いタイターが認められた。F1は現在まで303匹生まれ、その内の53匹が遺伝子発現、抗体価共に陽性であった。次に、顕著な病的所見が認められなかった上記トランスジェニックマウスに対して炎症惹起薬剤投与による神経症状の誘発を試みた。これらトランスジェニックマウスおよび正常対照マウスに対しSalmone11a minnesota由来LPSを経口投与し、末梢神経症状の観察と血中のGD3に対する抗体価のモニタリングをおこなった。両群とも約2ケ月経過した現在に至るまで末梢神経障害症状などは観察されていない。また、GD3に対する抗体価の更なる上昇も認められでいない。
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