研究概要 |
昨年度までにb系列ガングリオシド(GD3,GD2,GD1b,GTlb,GQlb)と強く反応するが、その他の糖脂質(a系列やアシアロ系列等)とは全く反応しない抗体(#43-20,IgM)の遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製した。生後ほぼ2年経過しているが、現在までのところ、顕著な神経症状は認められていない。ギラン・バレーやフィッシャー症候群の発症には病原体(C.jejuniやマイコプラズマなど)の先行感染がみられることが多く、その発症機序として感染後の炎症作用が重要な因子となる可能性が想定されている。そこで、顕著な病的所見が認められなかった上記トランスジェニックマウスに対してフィッシャー症候群患者より分離されたC.jejuni由来リポ多糖投与による神経症状の誘発を試みたが、末梢神経障害症状の惹起は観察されなかった。現在、炎症惹起薬物(種々のサイトカインなど)の投与による神経症状誘発の可能性を検討している。本年度は、上記IgM型に加えて、IgG型抗ジシアロガングリオシド抗体産生トランスジェニックマウスの作製を行った。方法は、#43-20のH鎖の定常部遺伝子を膜貫通ドメインをのぞいたG定常部遺伝子に置換した組み換えH鎖(IgG)遺伝子を構築した。これら遺伝子を導入したX63(IgG非産生B細胞株)の培養上清にはELISAにより比較的高い抗体価が認められた。常法に従って、H鎖(IgG)とL鎖の遺伝子をマウス受精卵に注入しトランスジェニックマウスの作製を試みた。現在までのところH,L両鎖の入ったマウスの作製に成功していない。IgM型抗体は胎盤を通過しないが、IgG型は通過するので、個体形成への関与も考えられる。
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