ハンチントン病モデル動物の開発とアンチセンス戦略法による発症制御法の確立

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09558104
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 西野 仁雄 名古屋市立大学, 医学部, 教授 (60073730)
• 研究分担者: 鳥居 邦夫 味の素(株), 中央研究所, 部長 ; 飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医学部, 助手 (00305525) ; 安居院 高志 名古屋市立大学, 医学部, 助教授 (00212457)
• キーワード: ミトコンドリア毒 / 虚血 / ラジカル / 細胞死 / ハンチントン病 / 線条体 / NO

研究概要

3-ニトロプロピオン酸(ミトコンドリア毒)投与による細胞性虚血(ATP欠乏)時には、線条体外側部が特異的に傷害され、動物はハンチントン様の不随運動ひいては下肢麻痺に陥る。本障害のベースに外側線条体動脈の脆弱性が関与するという仮説を立て、以下のin vivo及びin vitroの実験よりその検証を行った。その結果、
1. in vivo microdialysisによるNO_<2->,NO_<3->の測定
NO代謝産物であるNOx(NO_<2->+NO_<3->)を慢性行動中のラットを用いて測定したところ、線条体では他部位(小脳、視床)に比べ、NOxの基礎レベルが高く、3-NPA投与によりその上昇のピーク値及び後効果がより大であった。
2. RT-PCR法によるeNOSmRNAの解析
3-NPA投与後の血管内皮細胞の傷害をeNOSmRNA発現レベルより解析した。線条体(外側線条体動脈内皮細胞)では、eNOSmRNA発現が他部位より高値を示し、内皮細胞の脆弱性を示唆した。
3. GLASTのアンチセンスを慢性的に側脳室に注入すると、線条体のNOxレベルは上昇し、ハンチントン病様運動症状が高進した。
4. グルタミン酸トランスポータ阻害薬との同時局所投与により、3-NPAのアストログリア傷害作用は減弱した。
これらの結果は、3-NPAによる線条体特異傷害に内皮細胞のNO代謝、アストログリアend-feetのグルタミン酸トランスポー夕が深く関係することを示す。

研究成果

• [文献書誌] S.B.Deshpande: "In vitro protection of 3-nitropropionic acid-induced toxicity of astrocytes by basic fibroblast growth factor and thrombin." Brain Res.783. 28-36 (1998)
• [文献書誌] H.Nishino: "Estrogen protects against while testosterone exacerbates vunerability of the lateral striatal artery to chemical hypoxia by 3-nitropropionic acid." Neurosci.Res.30. 303-312 (1998)
• [文献書誌] T.Hashitani: "Dopamine metabolism in the striatum of hemiparkinsonian model rats with dopaminergic grafts." Neurosci.Res.30. 43-52 (1998)
• [文献書誌] C.V.Borlongan: "Early assessment of motor dysfunctions aids in successful occlusion of the middle cerebral artery." NeuroReport.9. 3615-3621 (1998)
• [文献書誌] H.Nishino: "The striatum is the most vulnerable region in the brain to mitochondrial energy compromise." J.Neurotrauma. (in press). (1999)
• [文献書誌] C.V.Borlongan: "Cell transplantation for neurological disorders" T.B.Freeman and H.Widner, 20 (1998)
• [文献書誌] M.Kumazaki: "Mitochondrial inhibitors as a tool for neurobiology" P.R.Sanberg,H.Nishino and C.V.Borlongan (in press), (1999)