研究概要 |
本研究では細胞内構造を細胞が生きたまま染色し,変形を加えた際あるいは能動的に収縮・弛緩する際の内部構造の3次元的変化を,張力変化と同時にレーザ顕微鏡下に詳しく観察できる装置の開発を目指している.初年度である本年度は引張試験機本体の設計と試作,試料把持部の設計,ならびに対象と考えている血管中膜平滑筋細胞の単離方法の確立および染色方法の探索を行う一方,血管平滑筋の収縮特性を血管壁全体の立場から詳細に調べ,本装置で計測されるデータの比較対象となるデータの蓄積を行った. 引張試験機本体の設計と試作に関しては,現有する顕微鏡との関係から装置の具体的緒元を決定し,調達した装置部品の基本性能を評価した.試料把持部に関しては,単離した細胞の操作方法を含め,把持方法の詳細を検討中である.また,血管平滑筋の単離に関しては,細切したウシ胸大動脈から遊走してくる中膜平滑筋細胞を集め,染色試験用の細胞を確保した他,ラット胸大動脈をコラゲナーゼならびにエラスターゼで処理し,平滑筋を単離する方法を確立した.しかし,現時点では血管壁内に存在すると予想される全平滑筋数のおおよそ10%程度しか回収されていないため,更なる条件の吟味が必要と考えている.一方,血管壁全体を用いた平滑筋の収縮特性評価実験からは,平滑筋が生体内長の95%(無負荷状態からの伸び比1.42)付近で最大収縮応力200kPa程度を出すことが見積もられ,これより細胞一つあたりの発生張力はおおよそ20μNと予想された.次年度以降はこれらの結果をもとに引張試験機を完成し,装置の特性の評価および改善を進める予定である.
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