高速撮像部については、回転走査よる高速化を基本とし、分解能等の測定能力を極力犠牲にせずに撮像を高速化する手法を開発した。まず、21素子からなる受信アンテナは、当初予定していた開口面アンテナ素子のアレイ化ではなく取得した構成部品を用いてダイポールアンテナを素子とするアレイアンテナを自作することにより実現した。CT画像の画質が素子アンテナの利得や反射特性より、利得パターンの単純性と密接な関係を持つことが、シュミレーションや実験の結果から判明したことによる。また、高速化という利点と引き替えに払わなければならない回転走査方式の対価である空間分解能の低下に関しては、RF電力増幅器の出力を10倍に高め、送受信アンテナ間の距離を大きくとることによって送受信アンテナ間中央部に該当する撮像領域での空間分解能の不均一性を小さく押さえる方式とした。ただし、この方策は10年度、アンテナ素子数を43としたときに完全な効果を発揮するものである。 マイクロ波CTのボケ発生要因は、対象物に対する測定波長の長さ、電磁波の散乱・回転、および測定法にある。ボケを点広がり関数(PSF)で表現する事とし、このPSFの推定法を検討した。マイクロ波CTの計測状態から実測は困難である。またマクスウエルの方程式の解析解を求める方法で投影データを計算、この結果からPSFを推定する方法を検討した。CWを仮定した場合、解は求められ、PSFは推定できた。しかしチャープパルスマイクロ波を用いた本システムではこの手法で解を求めることは不可能である。そこで、FD-TD法によりチャープパルスを照射した場合の投影データを求める手法を開発、その結果からPSF推定を試みた。推定結果は満足するものであったが、PSF自体が位置と方向に依存するため、そのデコンボリューションによる画質改善には数学的に新たな工夫が必要とされることを再確認した。
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