既存のチャープレーダ方式マイクロ波CTのスキャナをパラレルビーム型から開発した回転走査型に換装し、回転走査型CTシステムを試作した。受信用アレイアンテナは21本のダイポールアンテナ素子からなり、電子走査はピンダイオードスイッチを用いて高速スイッチングを実現した。同時に、時間領域でのデータ記録と計測終了後のスペクトル解析方式を採用することにより撮像時間の大幅な短縮を実現した。また、試作した回転走査型マイクロ波CTの性能評価を行った。直径220mmまでの対象物が測定可能な試作スキャナは、送受信アンテナ間隔282mm、ファン角60度、受信アンテナ素子数が21本で、受信アンテナ素子間隔は14.7mmである。このスキャナにより200方向からの投影データを収集して画像再構成を行う場合、測定時間は約90秒となる。試作したスキャナが分解能的に不十分であることは設計時より分かっていたが、よりパワーの大きなパルス照射が可能と仮定すれば以下のような条件で必要とする性能を確保できることが分かっている。すなわち、素子間隔が12.2mmで素子数41のダイポールアンテナをファン角87度の間に並べ、送受信アンテナ間隔を384mmとして200方向からの投影データを取得する。これにより、T-R方式のプロトタイプシステムと同等な性能が実現できることを確認した。 また以下のような二通りの方法でCT画像に生じるボケの修正を試み、ボケ修正に成功した。すなわち、 1. 視野中央に置かれた直径60ミリの食塩水ファントムを測定対象とした投影データと幾何光学的に求められた投影データからランドウェーバー法により当該CT装置のボケ関数PSF(Point Spread Function)を推定し、このPSFを畳み込む。 2. FD-TD法を用いチャープパルスマイクロ波が照射された場合の投影データを数値計算する新しい計算技法である“伝達関数法"を開発し、非常に細い食塩水円柱の投影データを数値計算してPSFと見なし、このPSFを畳み込む。以上の結果、従来の手法では不可能なほど鮮明な復元画像を得ることができた。 本研究によりチャープレーダ方式マイクロ波CTの回転走査方式を実現して高速撮像を可能とし、画像のボケ修正法を開発することによって、より鮮明な画像を得ることができるようになった。
|