平成9年度と10年度の動物モデルを用いた基礎的な検討により、以下のことがわかった。 1) アルブネックスを初めとする微小気泡からなる超音波造影剤は、MI値が0.6以下の比較的低い音圧を受けても容易に崩壊する。 2) 1秒間のフレーム数が多いと、スキャンによって造影剤が崩壊するため、実質の染影が十分に得られない。 3) 肝の悪性腫瘍は肝動脈の栄養のみを受けるので、非腫瘍部にくらべて血液潅流の速度が速い。したがって肝癌のみを造影するには、至適な間歇時間の設定が必要である。 4) 周波数は造影剤の共鳴周波数とプローブの特性を考慮する必要があった。その中で、比較的低い周波数の方が強いコントラストが得られた。 5) パルス波の波連長は長くするとコントラストはよいが空間分界能が劣化することが証明された。したがって波連長は通常のBモードよりやや長い2波が適当と考えた。 平成11年度には、以上の結果から、試作機の改良を行った。従来のハーモニック装置のフレーム数を少なくし、かつ任意のフレーム数を設定できるようにした。音圧は生体での減衰によってことなるものの、MI値で0.4を中心に増減できるようにした。 試作機を使って臨床応用を行い、良好な結果を得た。とくに波連長の違いによる造影剤の染影効果の差は明瞭であった。より小さい肝癌病変では、空間分界能とコントラストの両立が必要であった。スキャンの間歇時間を連続的に変化させることにより、腫瘍の血液潅流速度の違いを映像化することができた。このことは、腫瘍の悪性度などの性質を診断するのに有効な手法となりうることが分かった。臨床例では、同時に得られたCTやMRIとの対比を行った。その結果、超音波造影検査はCT、MRIの造影検査に比べて同等ないしより優れた組織性状診断能を有することが分かった.
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