研究概要 |
診断,手術,薬剤送達を目的とするマイクロロボットを生体内で移動させるために、粘液を利用して生体組織と接触することなく推進させる技術に関する研究を行い,斜め方向にリブを配置したインペラ-を回転させることによって推進する機構について研究した.まず流体潤滑に基づく理論解析によって推進力を最大にする最適設計条件を与えた.次いで拡大モデルを用いて粘液の流動を調べるとともに,発生する推力と移動速度を計測した.その結果,実験値はほぼ理論的予測と一致したが,リブのスパンが大きい場合には推力が理論値より低く,また1N以上の推力を得ることは困難であった.透明なインペラ-を用いる可視化実験により,前者の原因はリブの間の二次流れ(渦)による損失であり,後者の原因は気液界面の不安定化による粘液への空気の混入であることを解明した. マイクロモータを用いる小型モデルを製作して透明な管の内部で移動させる実験を行った.推力と移動速度を計測した結果から,斜め方向にリブを加工したインペラ-を回転させることによってマイクロロボットを管内で確実に移動させうることを確認した. 超弾性ワイヤによって後部からインペラ-を回転させる方法についても実験を行った.この場合には既存の内視鏡のチャンネルにワイヤを通して後部を回転させることによって,内視鏡を挿入することも可能である.超弾性ワイヤの先端部にインペラ-を装着した機器およびそれを内視鏡のチャンネルに装着した場合について,麻酔したイヌの体内で移動試験を行った.その結果,経口による順行性挿入の場合には十二指腸まで,経肛門の逆行性挿入の場合には上行結腸まで容易に到着させることができた.
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