研究課題/領域番号 |
09559001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
伊福部 達 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (70002102)
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研究分担者 |
禰寝 義人 日立中央研究所, 知能システム研究部, 研究員
和田 親宗 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (50281837)
上見 憲弘 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (70280857)
井野 秀一 北海道大学, 電子科学研究所, 講師 (70250511)
松島 純一 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (60173829)
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キーワード | ディジタル補聴器 / 話速変換 / イントネーション / 難聴 / 高齢者 / 範疇的知覚 / 波形ゆらぎ / ピッチゆらぎ |
研究概要 |
本年度は昨年と引き続き、話速変換と抑揚強調が老人性難聴にどの程度効果があるかを調べた。その詳細は拙著「音の福祉工学」(コロナ社)の第6章「音の加工による聴覚呈示」で述べた。これを踏まえ、昨年、日立中央研究所で開発したポ-タブルタイプ(9.5cm×5.5cm×1.3cm)のディジタル補聴器にソフトウェアを移植済である。本装置はDSP(ディジタル信号処理素子)1個と40秒間の音声を記憶することのできるメモリからなり、小型の上、価格も非常に安いという特徴がある。また、論文にはまだなっていないが、中国留学生の研究により本装置は中国語の四声の強調に有効であり、中国語を母国語とする老人性補聴者には特に有用なものになることが示唆された。 本年度はさらに、イントネーションばかりでなく音韻におけるホルマント遷移部が感音性補聴者にどのように知覚されるかを調べた。その結果、中枢で処理される「範疇的知覚」の能力が衰えていることが明らかにされ、この知見を基により優れたディジタル補聴器の設計ができる見通しがついた。このことは研究資料「難聴者における有声破裂音のホルマント遷移部の知覚特性」(日本音響学会聴覚研究会資料)に詳しく述べている一方では、母音の持つ微妙な波形ゆらぎが音声知覚にどのように貢献しているかも調べ、波形ゆらぎは1/f特性を持っており、これがヒトの声らしさを生成する上で重要な因子であることを見いだした。このことは拙文「1/f shimmer and jitter in normal sustained vowels and their application to speech synthesis]」(J.A.S.A)に詳細に記述した。これは、話速・抑揚変換に加えてディジタル補聴器の音質を向上させる上で貴重な知見となった。来年度は、実用化に向けた話速・抑揚変換機能の付いたディジタル補聴装置の設計を行う予定である。
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