研究概要 |
高エネルギー加速器研究機構放射光研究施設のBL18Bでキセノン封入の実験を20℃にてニワトリ卵白リゾチームと牛膵臓由来リボヌクレアーゼAで行い、それぞれの結晶へのキセノンの導入を確認することができた。いずれの結晶も、CuKα線では放射線損傷が激しく(キセノンの吸収による熱の発生のためと思われる)、1.0Åの放射光で初めて実験に成功した。 リゾチームは約1.2MPaの圧力で3つのキセノンが結合していた。これはPrangeらの実験(Proteins 30,61-73(1998))の追試に当たる。さらに、リゾチームでは、同一の結晶から、常圧、キセノン1.0MPa、2.0MPa、および3.8MPaの4つのデータセットを大型イメージングプレートを使ってワイセンベルグ法で収集した。圧が強くなるにつれて、結晶が劣化する傾向が見られたが、いずれのデータセットも、2.4Å分解能以上の良質のデータであった。常圧のデータを用いて、結晶構造の精密化を行った後、他のデータとの差フーリエ図を作製した。キセノンの圧力の増加とともに、結合サイト数が増加し、占有率が高まっていることが分かった。 リボヌクレアーゼAは高圧(IMpa以上)では結晶が壊れてしまったが、0.7Mpaで4つのキセノンの結合を確認できた。リボヌクレアーゼAの結晶では、キセノンが蛋白質分子間に結合しているので、圧が高まるとキセノンが分子間を押し広げて結晶を破壊するものと思われる。リゾチームでは蛋白質分子間への結合はないので、高圧にしても結晶は破壊されなかった。
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