超音波による骨強度診断に関する新技術の確立

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09559015
• 研究機関: 同志社大学
• 研究代表者: 大谷 隆彦 同志社大学, 工学部, 教授 (50066205)
• 研究分担者: 須崎 琢而 (株)堀場製作所医用システム統括部, シニアマネージャー ; 高井 信朗 京都府立医科大学, 医学部, 講師 (10226730)
• キーワード: cancellous bone / trabecular structure / porous structure / Biot's theory / fast wave / slow wave / ultrasonic wave speed / ultrasonic wave attenuation

研究概要

1998年度(平成10年度)においては下記の成果を得た。
(1) 海綿骨肉の超音波伝搬現象の解明:
(a) 海綿骨の骨梁は複雑な多孔性構造であるが、骨梁がほぼ一方向に揃った配列である。低速波は骨梁配列方向に関係なく、どの伝搬方向でもほぼl400m/sで一定であるが、振幅は配列方向から角度が増すと急激に減衰する。高速波は骨梁配列方向では約2500m/sであるが配列方向から角度を増すと伝搬速度が減少し角度60°では約1900m/s、直交方向では低速波の伝搬速度に漸近した。
(b) 海綿骨肉の高速波の伝搬速度は海綿骨の間隙率βに依存するが、更に骨梁の微細形状の影響を受けることを明らかにした。この結果によって海綿骨の病的構造変化を推定できる可能性が得られた(担当:大谷、高井)。これらの成果は論文及び国際会議にて公表した。
(2) 臨床計測:
(a) ヒトの橈骨の超音波伝搬特性を平成9年度に試作した臨床計測装置を用いて計測した。のべ107名の骨粗鬆症患者と健常者のデーダを取得し、同時にX線によるpQCT法(peripheral Quatitative Computed Tomography)を用いて橈骨の海綿骨密度を計測し、両計測結果の相関関係とデータ処理法の検討を行った(担当:須崎、高井、大谷)。
(b) 海綿骨肉の超音波伝搬現象の基礎研究で得られた成果に基づいて、ヒトの橈骨の超音波伝搬経路をモデル化し、種々の間隙率βに対する伝達関数を求めた。臨床計測で得られたデータを解析し、被験者の伝達関数と比較検討した結果、伝達関数を用いるデータ解析によって骨密度の推定が可能なことを明らかにした(担当:大谷、須崎、高井)。

研究成果

• [文献書誌] 五條雅史、今泉、大谷、須崎、高井: "橈骨中の音波伝搬特性に関する研究" 電子情報通信学会技術研究報告. US98-92. 1-8 (1999)
• [文献書誌] T.OTANI, A.HOSOKAWA: "Effects of the structural anisotropy and the porosity on ultrasonic wave propagation in bovine cancellous bone" Proceedings of 16th International Congress on Acoustics. Vol.4. 2505-2506 (1998)
• [文献書誌] A.HOSOKAWA, T.OTANI: "Acoustical anisotropy in bovine cancellous bone" Journal of the Acoustical Society of America. Vol.103 No.5,Pt.1. 2718-2722 (1998)
• [文献書誌] 久保恭臣、吉野、高井、平澤、細川、大谷: "超音波の骨密度測定への応用に関する実験的研究-牛海綿骨の超音波の伝搬について-" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. Vol19. 307-310 (1998)
• [文献書誌] Y.KUBO, S.TAKAI, N.YOSHINO, A.KOSOKAWA, T.OTANI: "Ultrasonic wave propagation in bovine trabecular bone" Transactions of the 3rd Combined Meeting of the Orthopaedic Research Societies of USA,Japan,and Europ.224 (1998)
• [文献書誌] 須崎 琢而: "超音波による海線骨特性の測定" READOUT (HORIBA Technical Reports). No.16. 25-28 (1998)
• [文献書誌] 五條雅史、今泉、大谷、須崎、高井: "ヒトの橈骨の音波伝搬特性に関する研究" 日本音響学会講演論文集. 9月. 1153-1154 (1998)
• [文献書誌] 椋田恭輔、大谷、須崎: "海綿骨中の音波伝搬-伝搬に伴う波形とスペクトルの変化-" 日本音響学会講演論文集. 3月. 851-852 (1999)