研究概要 |
本研究は,古典ギリシア的観照(theoria)の伝統に基礎をおく現代的知識論とその言語観の下に成立した従来の人間論に対して、非還元的な知と全く新たな言語用法に拠る「倫理的人間論」の構築を目指している。そのために,知と言語研究の源泉的手がかりとしてヘブライ思潮とギリシア教父学を研究し、他方でアリシュヴィッツ以降の現代思潮を検討し、最前線に布置する哲学者・思想家との交流を深めている。その結果,ヘブライ思潮に関しては,『福音書の言語宇宙』,『聖書の言語を超えて』を出版し,2000年には『他者の原トポス』を出版した。その中で,ハーヤー的存在,ダバール的言語,ケノーシス的人間論,ベリート的共同体などのテーマが深められた。ギリシア教父研究については,今日本邦で唯一の専問雑誌『エイコーン』を年2回出版しつつ,寄稿者の数も増えかつ反響大なるものがある。現在,上述の諸分野を統合すべく『キリスト教辞典』を編集中であり,これも21世紀の人類的文化・文明を展望するユニークな性格となっている。これに加え,アジアの東洋的視点やロシア宗教思潮の探究法も採用し,新倫理学の時代に適応した,地球化的規模の進展を目指している。またロシア,ドイツ,英米の宗教思想家や現代の生命科学者との交流も深まり,様々な結実があった。
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