本年度は、前年度に引き続き、西田幾多郎の原稿やメモ類の調査・整理、およびこれまでの西田哲学研究の中で蓄積されてきた諸成果(欧米における諸研究を含めて)の収集を行い、必要な文献の整備を行った。とくに京都大学所蔵の原稿類については調査・整理を完了することができた。設備備品費および旅費は、当初の計画に沿って、この目的のために使用された。 以上の作業を踏まえて、西田哲学、とくにその〈場所〉の思想の成立の過程に関する研究を行った。その際、まず第一に、西田が当時置かれていた思想状況-新カント派や生の哲学、現象学との思想的対決-や、当時の西田哲学に対する田辺元、高橋里美らの批判をも視野に入れ、全体的なパースペクティヴのなかでその成立の過程を考察した。さらに、西田の思想を、メルロ=ポンティやリクールの言語論・身体論など、現代思想との関わりのなかで考察し、その現代的意味を考察するために基礎作業を行った。来年度はこの点に関して、研究のいっそうの進展を図りたいと考えている。 以上の研究を行うにあたって、近年多くの成果を生みだしている諸外国の研究者、たとえば中国の卞崇道教授、ドイツのヨハネス・ラウベ教授らとも積極的な対話を行い、研究の進展を図った。
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