研究課題/領域番号 |
09610009
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森 俊洋 九州大学, 大学院比較社会文化研究科, 教授 (20090798)
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研究分担者 |
菅 豊彦 九州大学, 文学部, 教授 (50091385)
中畑 正志 京都大学, 文学部, 助教授 (60192671)
新島 龍美 九州大学, 大学院比較社会文化研究科, 助教授 (50172606)
小池 澄夫 滋賀大学, 教育学部, 教授 (70161833)
岡部 勉 熊本大学, 文学部, 教授 (50117339)
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キーワード | 理性 / エネルゲイア / 固体化 / 志向性 / プロネーシス / パンダシアー / 内石主義 / 養育 |
研究概要 |
森俊洋は、アリストテレスにおける観想と実践の分断の問題の解決として、ソピアとプロネーシスの関係に理論理性と実践理性との積極的な繋がりを看取しうることを明らかにした。更に、この理解を「活動」概念についての独自の解釈によって補強し、アリストテレスの「幸福」論の統一的理解の可能性を示した。 岡部勉は、行為論が人間の本質と個体性の解明、並びに、価値論の成立にとって持つ意味について考察すると共に、行為論の視点から、言語及び思考と人間の自然本性との関係について考察した。そして、以上の考察に際して、志向性の概念の限界を確認した。 小池澄夫は、弁論家の著作の翻訳を仕上げ、ソクラテスやプラトンに見られる民主制批判の背景を確かめると共に、科学・技術を論じる際に、行為の知(プロネーシス)が付録的に語られる現状の由来を探るために、デカルトからアリストテレスに遡源し、さらに両者をプラトンと比較した。 中畑正志は、「志向性」概念の成立をめぐる基本問題の解明として、アリストテレスが言語の表示対象と考えた「ノエマ」 が、「パンタシアー」と重ねられ、さらに心的像として解釈されていく過程を新プラトン主義の内に確認し、その哲学的背景の解明を行った。 新島龍美は、「行為の文法の成立」を、アリストテレス的実践理性の可能性の問題に定位して考察し、信念と欲求による二元論的な行為理解の持つ問題点を指摘するとともに、「状況を或る特有の仕方で見る人の魂に属する力」としての「徳」の哲学的重要性を示した。 菅豊彦は、「理性と欲求」「事実と価値」の二元論を批判する手がかりとして、いわゆる「薄い」価値概念とは異なる、「勇気」「謙虚」といった「厚い」価値概念の習得の構造を検討し、後者のコード化不可能性、並びに、その習得を通して事実の世界が変貌していくことを示した。
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