本研究は、科研出版助成(平成元年)・(平成六年)を得て公表した『劉向「列女伝」の研究』(東海大学出版会)・『儒教社会と母性-母性の威力の観点でみる漢魏晋中国女性史-』(研文出版)や、平成六年〜平成八年に受けた科学研究費による、「中国古代中世における女性史資料についての歴史的思想史的研究」(一般研究B、後の基盤研究B)と題する研究の研究経過・成果を背景に企画された。かつて、中国古代中世における女性伝記資料や女性教導資料を解析して、儒教社会家族制における女性の積極的役割の諸相について究明を試み整理した。そして、中国近世において、これら歴代の女性教導理念がいかに総合的に集積された展開を遂げているかを明らかにしようとし、この目標のもとに、本研究においては、さまざまな列女伝記資料や各種女性教導書の類が多く梓行された明清時代に焦点を絞り、研究対象資料を選定した。 本年度の研究実績の中心は、歴代の女性教導資料に注目しつつ編纂されたことが明確に確認される清時代の藍鼎元『女学』を取り上げ、この書に対する基礎的研究や詳細な資料分析研究を推進したこと、また、今後の研究推進の方向づけができたことである。研究成果の発表が印刷中のものもある。この他、従来の研究成果との関連のもとに、本年九月、『孝と母性のメカニズム-中国女性史の視座-』〔全三一二頁〕(研文出版)を刊行した。これも、本年度の実績の一部と考えている。
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