本研究の目的は、古代中国の占星の特徴である五惑星(木星・火星・土星・金星・水星)の「予言」が、当時、すでに驚異的なまでに発展していた古代中国の天文学の知識をもとに現実社会に機能していことの社会思想史的意義を解明することにある。 五惑星のうち〓惑(火星)に関してはすでに「童謠」との関連で研究成果を公表しているが、当研究では、〓惑にかくも顕著な特色があったのだから、五行思想・災異説の影響下に他の四惑星にもそれぞれ特徴的な姿を発見できると考え、まずは『史記』天官書・『漢書』天文志・『後漢書』天文志・『晉書』天文志を中心に五惑星の記録を抽出して整理した(消耗品費・研究補助謝金)。そして、それぞれの五惑星の観察記録に対応する占と応徴とが一見して対比できる一覧表にまとめることとした。時代が下がれば下がるほど五惑星の観察記録がいかに増えるか、単にその量が増えるだけでなく、その占や応徴もいかに具体的に記録されるかが視覚的に把握できるように工夫した。また、魏・晉についは、『三國志』及び『宋書』天文志との対照も行った(消耗品費・研究補助謝金・成果物印刷費)。 昨年度はケンブリッジ大学ニーダム研究所において研究の方向を発表し、斬新かつ有意義な研究であると多くの古代中国天文学の研究者から賛同を得られたので、今年度は北京において中国社会科学院哲学研究所・中国人民大学哲学系(中国哲学)の合同研究会において研究発表を行ったところ、出席者から高い評価を得られた(外国旅費)。なお、研究発表を行うにあたり、関西大学文学部教授橋本敬造氏ほか、内外の多くの天文学研究者から多大な助言をいただいた(国内旅費)。
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