1 明治期の「東洋哲学史」研究を代表するものとして、井上哲次郎(1855〜1944)の「東洋哲学史」研究の歩みとその学的背景・特質を明らかにすることを目指した。とくに次の諸点に注目して検討を加えることによって、従来研究の乏しかった面を明らかにした。 (1)6年間のドイツ留学と「東洋哲学史」研究の関係について。 (2)『日本陽明学派之哲学』(明治33年)『日本古学派之哲学』(明治35年)『日本朱子学派之哲学」(明治39年)の刊行について。とくに第一作の『日本陽明学派之哲学』の学的性格とその教学的側面について。 (3)在野の陽明学関係雑誌『王学雑誌』『陽明学』との関わりについて。 (4)蟹江義丸と共編『日本倫理彙編』(明治35年)について。 2 井上哲次郎の陽明学研究とその学的立場を明らかにするために、幕末から明治期の陽明学徒の三島毅(中洲、1830〜1919)と東正純(沢瀉、1832〜1891)・東敬治(正堂、1869〜1935)父子の学的歩みと特質とを対比して、検討を試みた。これに通じて、明治期の儒学あるいは陽明学が、「東洋哲学史」研究とどのようなつながりをもって展開して行くのか、その有り様を捉えようと試みた。 なお、成果の一部は雑誌論文としてすでに公表したが、多くは口頭発表で行なったので、今後、順次に雑誌論文として公表していく予定である。
|