研究課題/領域番号 |
09610018
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤井 教公 北海道大学, 文学部, 教授 (70238525)
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研究分担者 |
沼田 一郎 北海道大学, 文学部, 助手 (20261258)
吉水 清孝 北海道大学, 文学部, 助教授 (20271835)
細田 典明 北海道大学, 文学部, 助教授 (00181503)
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キーワード | 一乗 / 一闡提 / 五性格別 / 智〓 / 性具 / 聖徳太子 / 『法華経』 / 『梵網経』 |
研究概要 |
仏教における平等と差別の相反する思想は、具体的には平等思想は仏陀の教説としての四姓平等より大乗仏教の仏性如来蔵を根拠とした一乗皆成思想として現れ、差別思想は大乗『涅槃経』起源のicchantikaや瑜伽唯識の五性各別説として現れている。icchanitkaは『涅槃経』自体においてすでにその実体が失われつつあり、「悪くなる存在」として観念化が進んでいるが、後の『入楞伽経』や『大荘厳論経』などではすでに観念としてのみの存在になっている。このことは東アジア仏教においても同様で、一闡提は成仏不可能な存在としての観念的存在として扱われており、五性各別説との関連でら論じれることが多い。そして、その五性各別説は教理思想上、一乗皆成思想と対極にあるものである。以上のことを前提に、本年度は東アジアの平等、差別両思想の変遷について、まず平等思想としての一乗皆成思想をみることによって両思想の解明に努めた。 具体的には、中国隋代に『法華経』の一乗皆成思想に依拠して統一仏教を樹立した天台智〓を取り上げ、彼の仏性・如来蔵思想に焦点を当て、大乗戒を説く『梵網経』との関わりから検討し、その結果、智〓の戒律思想の背景に仏性説が大きく関わっていることが知られた。さらにまた、如来性悪説を含めた彼の性具思想に焦点を当ててその原意を探り、善悪不二、現象法がそのまま絶対であるとする思想は、一法が一切法を本来的に具えていて完全であるとする一即一切の相即思想に由来し、彼のその思想的淵源は『華厳経』にあるということを指摘した。また日本においては、仏教を統一国家樹立の理念的支柱とした聖徳太子を取り上げ、文献資料の真偽問題の検討を経て、『憲法十七条』や「三経義疏」などを通して見られる太子の思想を究明し、その平等思想について論じた。
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