研究概要 |
本年度を含む2年間の交付期間において,インド論理学派の重要なテキスト『ニヤーヤ・マンジャリー』(NM)のプラマーナ論(知識論)の解析を行い,作成したテキスト・データベースをもとに,特に従来未開拓だった「文章の趣意」に関する議論(文意論)についての訳注研究が主要な成果として得られた。また著者ジャヤンタとNMについて注目すべき新知見を獲得した。以下に成果の骨子を箇条書きにする。(なお本研究の成果は近く東京大学に提出予定の博士論文の重要な部分となる。) 1. ジャヤンタとNMについて:(1)著作に関する先行研究を網羅的に整理し,問題の所在を明確にした。まかつ既発表の該当論文を英訳した。(2)特に彼の「他の著作」と理解されてきたNM中の「他のシャーストラ」という表現は,むしろニヤーヤ学以外の「他の学問」を指すことを明示した。(裏面の研究発表参照(3)後代のニヤーヤに及ぼした影響を測定するー基準として,後代のニヤーヤ文献におけるジャヤンタの引用断片を調査した結果,直接彼の言葉に言及するケースはきわめてまれであり,ニヤーヤ学史において彼は従来の報告とは異なり,むしろ傍流だった可能性が高いことを指摘した。(4)その一方でジャイナ教文献には頻繁に引用されている事実を明らかにし,かつそこに若干の引用断片が見られる“Pallava"という作品は,一部の学者がNMと同一視しているが,むしろ散逸した別の著作であることを示唆する根拠を見いだした。(5)NMの諸版本の問題点(6)NMの作品構成上の特質(いずれに先行研究はなかった) 2. NMにおける「文意論」の研究:(1)NMのプラマーナ論とシャブダ論(2)シャブダ論と「文意論」(3)文意論内容概観(4)訳注研究(NM II,pp.69-142)
|