『タットヴァ・チンターマニ・ラハスヤ』「論理的必然関係章」をほぼ等しい量に3分割し、本年度はその第2部分(「虎」と呼ばれる人物による論理的必然関係の定義を扱った部分)のサンスクリットテキスト校訂、英訳、図式を用いての分析を終えた。この成果は、2本の学術論文として完成され、さらにもう1本が現在投稿中で初校を終えた段階である。 今年度分析を終えた部分の中で、現代論理学に基づく記号化を試みれば等値となってしまう定義が2つ現れる。しかしその2つは互いに他方に還元できないものとしてテキストでは扱われている。このことから、現代論理学からすれば等値であっても、インド論理学においては等値ではないことがあるという点が指摘できる。このようなことは、論理的必然関係という極めて論理学的な概念を扱っているにもかかわらず、定義に用いられる諸名辞(概念)が表示する対象の存在論的ステイタス(身分)を問うために起こるのではないかと思われる。存在論上の関係を明示する本研究の図式によって、現代論理学からすれば「等値」と見なされる2つの定義の「非等値」が明瞭に説明可能である。図式の有効性が益々高まった。 本研究の基礎資料となる上記のサンスクリットテキストをデータベース化するための入力作業を終え、校正作業を継続した。また、このテキストが注として付けられた(つまり本文に相当する)ガンゲーシャの『タットヴァ・チンターマニ』のテキスト入力作業を終え、校正作業に入っている。
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