研究概要 |
本研究は、ジュニューナガルバ(c.700-760)作の『二諦分別論』『同注釈』およびシャーンタラクシタ(c.725-788)作の『同細疏』の訳注作業および内容分析を進めるとともに、同論および同注釈を頻繁に引用しながら自説を展開する著者・訳者不明の『入菩薩行論解説「細疏」』の研究を遂行することを目的としていた。3年間におよぶ研究の結果、『入菩薩行論解説「細疏」』の著者が、シャーンティデーヴァを、認識対象を外界に認めるいわゆる「外境が存在すると説く中観」の立場に立つ論師と見なすという事実とともに、それゆえ同著者が、思想的立場の近接するジュニャーナガルバの『二諦分別論』および『同注釈』を重視し、援用していることの思想史的な背景が明かとなった。 3年間の研究成果については、随時、論文あるいは口頭発表等を通して公にしてきた。本研究成果報告書には、紙数の制約も考慮したうえで、『二諦分別論』および『同注釈』をしばしば援用する『入菩薩行論解説「細疏」』の第8章の訳注とともに、同注釈の基礎となる『入菩薩行論』(初期本・9章本)の中から、第1,2,6,7,8章の5つの章について、スタイン収集のチベット語文献(Stein No.628)のローマ字体テキストを作成し、編入した。
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