昨年度と同様に、今年度も七月に、現地調査のため関西に出かけた。今回は京都市の高山寺のほか、和歌山県の高野山大学も訪ねた。この頃ちょうど取りかかっていた講式の作品研究に関して、現地で複数の写本が閲覧できたことは、今年度の調査の大きな収穫であった。そこから得られた新しい成果を、調査から間もない八月後半に開かれた学術会議で口頭発表し、更に詳しい研究を続けて、二つの論文を纏めた。二つの論文とも、目下今印刷中である。 今回の調査から得られた最も大きな発見は、複数作者の事実の解明であるが、これは、緻密な伝本調査によらなければ発見不可能であった。講式の中でもかなり流布している作品に『光明真言講式』という作品があって、これは古くから知道上人作か、もしくは明恵上人作とされてきた。明恵作説は、明恵が長らく暮らしていた高山寺に伝わっていた説だったが、作品の内容そのものに明恵とは思えない部分が沢山含まれていた為に、こちらの説は、これまで積極的に取り上げらることはなかった。 データベースに入れる為に調査したところ、様々な形で伝わってきた『光明真言講式』は、主に五段式と三段式に分けられることが判った。あまり流布していない三段式は、これまでは五段式の略本であると考えられてきた。しかし今回の綿密な伝本調査によって、三段式は逆に五段式の元になっていたことが判り、しかもこの三段式の作者は、やはり明恵であることを証明することができた。 データベース化の作業は急ピッチで進めているが、試験段階としてこの四月から公開に踏み切るつもりである。今回はまだデータの三分の一程度しか利用できないが、利用者の反応を参考にして改善作業に入りたい。(現在は公開に向けてデータベース以外のメニュ作り 一 人門編・ヘルプ等 一をしている。)尚、データベースのアドレスは下記のとおりである。http://faculty.web.waseda.ac.jp/guelberg/koshiki/datenb-j.htm
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