三年という研究期間の最後の年となったので、今年度は主にデータベース作製や公開に向けて作業を進めてきた。 出来上がったファイルをサーバーに送り込む作業は、リンク等の有効性やソースの誤りを小まめにチェックする必要がある為に、非常に時間のかかる作業である。この作業を開始したのは昨年八月であるが、それ以来二月二十日の現時点までに、講式データ(313作品の、各講式に関する書誌学的データ、即ち伝本、翻刻、参考文献等)の全てを登録し終わり、伽陀データは、約750点の中の159点を、本文データは57点の異なる作品を、登録した。特に講式データの全てを公開したことによって、データベース作製の主な目的を果たし、これによって今後の講式研究全体に非常な便宜を与えることができたと思う。 伽陀データは、例えば同じ伽陀がどの講式にあるかを細かく調べる際等、データベースの検索機能には欠かせないものであるが、まだ全てを作製し終わっていないのは、次の理由による。伽陀データは数が多い為に、いずれにせよ非常に時間がかかるが、データファイル作製には伽陀本文等が必要となるので、伽陀本文も含まれる講式本文入力後に作製した方が、伽陀データの作業過程を簡略にすることができる。従って、伽陀のデータファイル作製は、講式本文入力後から始めている為に、伽陀データが最も遅れているのである。 本文データはこれからも徐々に増やしてゆくつもりで、取り敢えずは講式研究上に重要なものを選んだ。その中にはこれまで活字になっていなかったものも、相当含まれている。 現地調査は京都(高山寺と大覚寺)で行なった。特に大覚寺では、所蔵されている殆ど全ての講式写本の閲覧が許されたばかりか、その時点までのデータベースにまだ入っていなかった作品も、十種類程度発見することもできた。 問題点としては、デジタルカメラによる資料撮影に関して、写真の精密度等の技術面上の問題が少ないことが判った。それは単に技術的な問題なのだが、資料の公開に関して、所有者の許可を得ることが常に問題となり、閲覧調査はできても公開できなかった講式も少なくない。この後者の問題をめぐっては、一個人の研究者の力を越えた様々な問題が解決されなくてはならない。
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