研究課題/領域番号 |
09610030
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹下 政孝 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30163398)
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研究分担者 |
内藤 陽介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (90262055)
柳橋 博之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (70220192)
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
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キーワード | エジプト / マイノリティ / 現代イスラム / イスラム法 / イラン / 在欧イスラム教徒 |
研究概要 |
1 補助金交付内定の通知を受け、6月20日に研究方針を話し合う第1回会合が開かれた。最初に竹下が、前年度の研究実績の総括を行い、ついで、エジプトにおけるマイノリティ問題の事例として、コブト教徒ならびにヌビア系住民の問題について概観する基調報告を行い、現代イスラム世界におけるマイノリティの問題が、国国家や社会の統合や安定をはかる上で、きわめて重要な問題となっていることを指摘した。その後の共同討議では、この指摘を受けて共通の関心を培うとともに、秋までに各自が個別研究を行い、9月以降、報告と共同討議を行う方針を確認した。 2 9月からは以下のような研究発表が順次行われた。まず、柳橋がイスラム法に規定されたマイノリティの法的地位についての報告を行い、マイノリティに対する「保護」の概念が、欧米風の実定法と伝統的なイスラム法とでは大きく異なっており、そのことが、今日のイスラム諸国において深刻な法摩擦を引き起こしているとの指摘を行った。ついで、鎌田がイランにおけるマイノリティの実状について報告した。さらに、イスラム教徒がマイノリティである社会として、内藤がイタリアの事例を中心に、在欧イスラム教徒の人権問題について、それぞれ報告した。鎌田、内藤の発表は、それぞれ、現地等での豊富な体験に基づいたもので、文献だけでは得られない貴重な情報を数多く含んでいた。 3 以上のような個別の研究成果をふまえ、当面の共同研究のテーマとして、クルド人問題を中心に、現代イスラム世界のマイノリティついてより多面的に考察することとし、一月以降も討議を続けている。討議の中では、マイノリティ問題の基本である身分法・家族法についての基礎的な研究の蓄積が不十分との指摘もなされているが、いずれにせよ、このテーマは巨大なものであり、今後も私的研究会による研究を継続したい。なお、成果は二〜三年後をめどに公表する予定である。
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