平成11年度の研究実績は以下の3点にまとめられる。 1.古代メソポタミアの太陽神とされるウトゥ(シュメール語)とシャマシュ(アッカド語)について、それぞれの来歴と属性及びそれらの図像表現について検討した。神話や叙事詩における太陽神の役割、呪文や儀礼における太陽神の位置づけ、さらに人名における太陽神への言及について調査を進めた。図像については、レリーフや円筒印章像を調査した結果、特にアッシリア(北メソポタミア)においては、太陽神のシンボルとして「有翼の太陽」が頻繁に出現するという、南メソポタミアには見られない発展が認められた。それはアッシリアが南の伝統ばかりでなく、西方のシリア・パレスティナ地方を経由して伝来したエジプトやヒッタイト(アナトリア)の文化の影響を受けたためであることを確認した。研究成果の一部をシュメール研究会(1999年12月22日)において口頭発表した。 2.昨年度に続いてキュルテペ(中央アナトリア)の遺跡から出土する紀元前20〜18世紀の古アッシリア時代の文書研究を進め、データベースの作成をした。1999年5月31日〜6月1日にアンカラで開催されたキュルテペ発掘50周年記念会議において研究成果の一部を発表した。 3.紀元前3千年紀から伝わるシュメール語とアッカド語の神話の多くは、紀元前7世紀にアッシリアの首都ニネヴェで書き写され、書庫に収納されていた。それらに基づいてメソポタミア神話のいくつかの論点についてまとめ、さらにアッシリアで作成された神話の背景をさぐった。
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