平成12年度の研究実績は以下の3点にまとめられる。 1.紀元前3千年紀からメソポタミアに伝えられた神話の一つである『ギルガメシュ叙事詩』の主題について論じ、それが「死の克服」であることを提示した。それは近年発表された月本昭男(岩波書店1996年)の解釈に対する批判ともなっている。その研究成果を論文「『ギルガメシュ叙事詩』-死の克服の神話」として『東洋英和女学院大学心理相談室紀要』3号(1999年)に発表した。 2.昨年度に続いてキュルテペ(中央アナトリア)の遺跡から出土する紀元前20〜18世紀の古アッシリア時代の文書研究を進めた。その成果の一部は「キュルテペ文書-古アッシリア商人の世界」を『古代アナトリアの文字の世界』(中近東文化センター2000年)に発表した。また9月30日に中近東文化センターにおいて同様のテーマによる公開講演を行った。 3.昨年度に続いて古代メソポタミアの太陽神ウトゥ(シュメール語)とシャマシュ(アッカド語)について検討した。神話や叙事詩における太陽神の役割を分析した。また太陽神の図像とシンボルを通史的に追うことによって、エジプト、シリア、アナトリア(ヒッタイト)の文化がアッシリアに取り入れられていたことを確認した。これらの研究成果は「メソポタミアの太陽神」として松村一男・渡辺和子編『太陽神の研究』(リトン2001年)に発表する予定である。
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