カクレキリシタンの人々の信仰は、仏教や神道その他さまざまな民俗信仰と不可分にかかわっており、いわゆる純粋なカクレキリシタン行事の観察だけでは不十分である。本年度はまず生月におけるさまざまなカクレキリシタン関係の祠・遺跡、死霊様、神社仏閣、個人で祀る祠などの宗教施設の存在を確認し、できる限りそれらにまつわる伝承の聞取を行った。さらに生月島元触地区のカクレキリシタンの最高役職者であるオヤジ様の年末から新年にかけてのカクレキリシタン行事、およびカクレキリシタンと直接関係を有しないが、個人で関わっている檀那寺における新年参詣行事、お水取り、新年の家屋敷、墓の清め、家庭内における仏壇、神棚、荒神様、カクレキリシタンの神を祀る祭壇への供物のお供えと祈願を調査した。その他に、新しい石塔に対するカクレキリシタンの役職者によるお魂入れの行事や、カクレキリシタンも参加する神主による水神祭を調査した。 カトリックの信徒であったものがカクレキリシタンの家に養子に入り、本年カクレキリシタンの最高役職者を務めることになり、カクレキリシタンとカトリック信仰の2者を同時に行うという極めて稀なケースを調査することができた。両者の関係を知るに極めて興味深い事例である。 生月島の他に、これまで全くその存在が報告されることのなかった、五島列島の上五島若松町の築地、横瀬にいまだに2つのお帳(カクレキリシタン集団)が存在することを確認し、生月とは異なる五島のカクレキリシタンの現状について聞き取り調査を行った。
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