カクレキリシタンに対する一般の理解は、いまだに現在にいたるまで弾圧時代の仏教の神道を隠れ蓑としてきた当時の信仰形態を密かに守り続けているキリスト教徒であるという、実体から乖離した、誤った認識が定着している。本研究は一貫して現代に行き続けているカクレキリシタン信仰のの真の在りようを明らかにしようとするものである。 そのためには彼等の信仰における神観念の分析が最も重要なポイントとなる。結論から先に述べるならば、カクレキリシタンに信仰における仏教、神道、さまざまな民間信仰的要素は、決して隠れ蓑的なものではなく、それらにさらにキリスト教的な要素が渾然一体となって融合し、まったく新たなひとつの民俗宗教を形成しているといわざるを得ない。 本年度の調査研究はこのことを実証的に明らかにするために、昨年度に引き続き、生月島におけるカクレキリシタン行事と呼ばれるものの他に、彼等が日常的な生活の中で日々祀っているカクレキリシタンとは直接かかわりのない、神仏や諸霊にいかなるものがあるのか、ある特定のひとりの人物に集中して調査を試みた。また島内におけるカクレキリシタン以外の人々が信仰の対象として祀っているものにどのようなものがあるのか、可能な限り継続調査を行ったが、調査を重ねるたびに新たなものが見出されているのは驚きである。 これからの課題としては、地域差による相違が見られるのかどうか、外海地方や五島地方においても同様な調査を行う必要があると思われる。
|