研究概要 |
平成9年度から10年度にかけて行われた本研究は、現代社会に認められるモラルの状況を確認し,それをとりわけ電子ネットワーク内のモラルの生成の現場とつきあわせることで、現代的なモラルの構造を分析することに主な狙いがあった。この目的は、2年間の研究によりほぼ達成されたと言うことができる。 研究代表者は、その目的を追求するために、(1)伝統的な倫理学の性格付けとそれに基づくコンピュータ倫理の特性の抽出や)現実世界のコミュニケーション形態とコンピュータ・コミュニケーションの比較分析、を中心とする調査・研究を行い、それを具体化するために、とりわけ(2)教育の場面でのモラルの分析を試みた。というのも、近年わが国においてはコンピュータ・エシックス的な問題は。教育に関わる議論の中で登場することが常だったからであり、また学校の情報倫理教育(ここでは、最近、「情報モラル」という言葉が使用されている)が模索されてきたからである。本研究の成果の多くが、教育そのものに内在する問題の研究をも含んでいるのはそのためである。それらは本研究のいわば予備的研究として位置付けられている。 以下の「研究発表」と対応付けるならば、(1)に関わる研究成果は『モラル・アボリア』や『心情の変容』内の研究代表者の叙述として発表され、(2)に関わる成果は,「〈関係〉としてのいじめ」「道徳授業と教え込み」「内なる力」などに示されている。それらの研究が合流して'Education of“Information Morals"and its Idola'という国際ワークショップで報告された成果も得られることになった。今後しばらくは、こうした教育現場に関わるコンピュータ・エシックス的研究をいっそう深めてゆくつもりである。
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