研究課題/領域番号 |
09610043
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三島 憲一 大阪大学, 人間科学部, 教授 (70009554)
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研究分担者 |
細見 和之 大阪国際大学, 総合科学部, 講師 (90238759)
徳永 恂 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (70027952)
木前 利秋 大阪大学, 人間科学部, 教授 (40225016)
山口 節郎 大阪大学, 人間科学部, 教授 (30061964)
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キーワード | アドルノ / ベンヤミン / 『否定弁証法』 / 『美学理論』 / 戦後民主主義 / 『啓象の弁証法』 |
研究概要 |
1.続々と出版されつつある戦後のアドルノの講義録を材料にして、一方で『否定弁証法』や『美学理論』のような、近代批判を展開しながら、他方で、1950年代から60年代のドイツに民主主義を根付かせるために、その当時の文化現象や社会現象に具体的に対応した発言をしている実態が解明され、さらにその両者を〈矛盾〉と取るか〈相互補完的〉と見るか、アドルノのなかでもゆらぎがあるさまが浮かび上がってきた。具体的には、『非同一的なもの』を重視し、福祉社会を管理社会の強化と見て、そこにファシズム的メンタリティの存続を見る立場から社会民主党のゴーデスベルク網領に反対しながら、他方で反対の文書を公開せず、ダルムシュタットの現代音楽祭などを通じて、モデルネの芸術とデモクラシーの間のかすかなつながりを発展させようとしたことが重要な問題として出てきた。 2.亡命時代のアドルノとベンヤミンとの書簡で交わされる理論的対話の分析により、19世紀市民文化に対して好意的なアドルノと、完璧に過ぎ去った過去として距離を取るベンヤミンとの相違がはっきり浮かび上がってきた。国際的にも今なお充分に解明されていないこの問題の糸口がつかめつつある。具体的には、19世紀のパリを壮大な文化的欺瞞と見るベンヤミンと、市民文化の理性のポテンシャル(ハーバーマス)を、『損壊した自我の叫び』 (例えば表現主義のような)になおも認めようとするアドルノの相違である。 3.『啓蒙の弁証法』のなかの主としてアドルノによる執筆部分とホルクハイマーによるそれとの分別がさらに進んだ。具体的には、アドルノの方が文化産業に厳しく、50年代になってからも、始まりつつあるヤング・カルチャーを忌避していることの問題性が浮かび上がってきた。
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