研究課題/領域番号 |
09610043
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三島 憲一 大阪大学, 人間科学部, 教授 (70009554)
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研究分担者 |
徳永 恂 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (70027952)
木前 利秋 大阪大学, 人間科学部, 教授 (40225016)
山口 節郎 大阪大学, 人間科学部, 教授 (30061964)
細見 和之 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (90238759)
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キーワード | 限定否定 / 否定弁証法 / カント / 客観 / 権威主義的家族 |
研究概要 |
平成11年度は、40年代のアドルノとホルクハイマーの往復書簡から、<限定否定>の概念の発生状況を調べ、それが戦後のデモクラシーの理論につながる可能性を彼らが追求していたことを確認した。また、アドルノが戦後社会に向けて、ナチスによって汚れたドイツの知的伝統、その中の偉大な文学作品や思想の遺産の再評価を試みる、一種の救済的批評を計画的に行っていたことも理解された。これによって、アメリカにとどまらず、ドイツに戻った理由も、そこにあることが了解された。また最晩年のホルクハイマーとの葛藤が、単に社会研究所のプログラムにあるのではなく、現代社会における理論と実践の関わりをめぐる理論的論争を含んでいることも、書簡の分析から理解された。そこには、形而上学的な夢をめぐる両者のスタンスの違いも明らかである。ショーペンハウアー的ペシミズムにホルクハイマーが向かったのは、実は彼には、強烈な実践思考・変革願望があり、そうしたいっさいが実現し得なかったという幻滅のゆえであり、それに対してアドルノは、理論の独自性に固執しながら、それゆえに現実の少なくとも知的雰囲気に変化をもたらしたと考え、そのことにある程度満足していたのである。今後は、この学派の弟子たちの発展をこの点に関して追う課題が残った。
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