従来、定形と非定形という形の分類では人間の造形活動が定形を中心として行われてきたため、定量化の困難な非定形はアクシデント・フォーム(偶発的形体)としてひとまとめにされていたにすぎなかった。 本研究はこれまであいまいな分類の非定形にまとめられていた形の一群をフラクタル幾何学の手法を導入し、非定形を定量化することによって見直しを計り、形全体の新しい体系化を押し進めることを目的とする。 平成9年度は非定形の形の一群からフラクタル次元を計測し、フラクタル性をもつ形を抽出、フラクタル形と命名、形の体系化の中に新しい「系」として取り込んだ。従来の理念的形体における非定形の概念には有機的形体(Organic Form)、偶発的形体(Accidental Form)、そして意識的につくられた非定形の形として不規則形体(Irregular Form)の大きく3つに分けられているが、本研究における成果としてフラクタル性をもつ一群のフラクタル形(Fractal Form)を加え、4つに分けた。同様に現実的形体(Real Form)として自然界の形である自然形体(Natural Form)の中にも有機的形体、偶発的形体、岩石や雲、稲妻のような自然界の無生物の形である無機的形体(Inorganic Form)の3分類にフラクタル造形を加え、4分類にする。 平成10年度はこれらの成果の一部を国際学会で発表、同年出版の著書・雑誌等に同成果に反映させた。現在最終成果として新・形の体系ともいえる定形・非定形も含め、造形全体のシステムを著書「形の体系」(NHK出版・今秋刊行)に発表する。
|