本年度は、被験者の経済状況と場面の不確実性の程度が選択行動に及ぼす効果を分析するための予備実験を行った。具体的には、行動経済学的な視点に立って選択行動を分析するために欧米で開発された質問紙の日本語版を用意し、それらを日本人の大学生および中学生に適用するための予備調査を行った。具体的には、親の職業等から経済状態を推定する試み、および、経済状態に関するそれらのデータと被験者の選択行動を比較する試みが行われた。それと同時に、報酬量の異なる2つの条件において、選択行動が異なるかどうかも分析された。たとえば、10万円と100万円で不確実状況下での選択行動が異なるかどうかが、行動経済学的な手法により分析された。その結果、(1)この方法により被験者の経済状態をある程度推定することができるかもしれないこと、および、(2)報酬の金額の大きさによって報酬の不確実性に対する選択行動ことが示された。前者の結果については、まだ研究手法として実用化の段階にいたっていないため、今後は経済状態を推定するための更なる工夫が必要とされる。一方、後者の知見は従来の行動経済学的な研究の結果と一致するものである。今後は、これらの知見を踏まえて、経済状態、単価、不確実性などを行動経済学的な視点に立って統合的に研究することが予定されている。
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