まず、(1)選択行動研究における最近の動向が概観され、選択行動を規定する諸要因に関する過去研究が整理された。 次に、(2)聴覚的注意集中場面における人間の選択行動(注意配分行動)を分析するための手法が開発され、その手法を用いて注意集中場面における選択行動(注意配分行動)が分析された。その結果、そのような注意集中場面においては、合理的な選択からの逸脱が見られることが実験的に示された。 さらに、(3)得点を獲得する課題における人間の選択行動が実験的に分析され、得点が1以下の確率で与えられるいわゆる不確実状況下での選択行動が分析された。その結果、被験者が確率や平均などの数学的な知識を利用することのできない場合のみならず、それらの知識を利用できる場面であっても、人間は合理的な選択からの逸脱を系統的に示すという新しい知見が得られた。 そこで、(4)そのような合理的選択からの逸脱を規定する行動経済学的な諸要因を統合的に分析するために、時間割引に関する質問紙の日本語版を開発し、それらを日本人の大学生、中学生、および、老人に適用する研究を行った。これらの質問紙の目的は、不確実な選択肢の価値の現時点における価値(いわゆる時間割引)を、被験者ごとに推定することであった。調査の結果、a.この質問紙によって合理的選択の個人差を解明することが可能であること、b.被験者の年齢によって合理的選択が異なること、さらに、c.被験者の金銭管理に関する経験の差により合理的選択が異なる等が示された。
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