研究概要 |
1.サルによる刺激提示時間及び刺激色の遅延見本合わせ課題の遂行 視覚刺激の提示時間を短期的に保持する際,どのようなコーディングが行われているのかについて検討するため,アカゲサルによる提示時間の遅延見本合わせ課題(Delayed Matching to Sample of Duration:DMSD)を設定し訓練した。その結果,3頭のサルがこの課題を習得した。これら3頭に対し,さらに刺激の色の遅延見本合わせ課題(Delayed Matching to Sample of Color:DMSC)も訓練した。その結果,2頭のサルがこの課題も習得し,最終的にDMSD課題とDMSC課題のどちらも80%以上の正反応率で行えるようになった。 2.提示時間のコーディングに関する行動分析的な検討 訓練終了後,DMSD課題においてサルが実際に提示時間の長短を情報としてコードし保持しているか否かについて検討するため,DMSD課題とDMSC課題それぞれについて,遅延期間の操作による正反応率の変化を調べる保持テストを行った。その結果,色を保持するDMSC課題においては,見本刺激の提示時間が短い場合に正反応率がより低下するという,いわゆる刺激の痕跡減衰(trace decay)が生じ,刺激提示時間の長短それぞれを特に情報としてコードしてはいないことがわかったが,DMSD課題では,このような刺激提示時間の違いによる痕跡減衰は生じなかった。つまりDMSD課題では,提示時間の長短をそれぞれ異なる情報としてコードし保持していることがわかった。 3.テトロード・アレイによる前頭連合野からのマルチニューロン活動の記録 サル用のテトロード・アレイとマイクロドライブを作製し,DMSD課題とDMSC課題それぞれを遂行中のサルの前頭連合野から多数ニューロン活動を同時記録した。すでにデータをとり終え解析を進めている。
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