平成9年から行ってきた当実験的研究(6つの実験による)の目的は、データ駆動型処理課題と見なされる英語単語完成課題と日本語単語完成課題、そして、概念駆動型処理課題と見なされる自由再生課題を用いて、日本人大学生にとっては第二言語である英語単語と母語である日本語単語に対する処理の違いについて検討することであった。本年度平成11年度には、これまでの英語を専攻しない大学生のデータに加えて、英語を専攻とし、英語の熟達度のより高い大学生のデータの収集を中心に行った。その結果、1)具象単語を聴覚呈示してその後で自由再生を求めると、精緻化の効果が見られた。また、概念駆動型処理課題である自由再生課題においても、英語で呈示された単語は英語で再生されることが多く、日本語で呈示された単語は日本語で再生されることが多いというように、呈示言語の影響が見られた。さらに、英語単語完成課題でも日本語単語完成課題でも、聴覚呈示された単語の影響は見られず、モダリテイ効果が見られた。 2)具象単語を視覚的に呈示してその後で自由再生を求めると、精緻化の効果が見られた。また、この場合も、呈示言語の影響が見られた。さらに、日本語単語完成課題では、先に単語が呈示されたことによる学習効果が見られなかったものの、英語単語完成課題ではその効果が見られた。 3)抽象単語を視覚的に呈示してその後で自由再生を求めると、精緻化の効果は見られなかった。また、呈示言語の影響が見られた。さらに、英語単語完成課題では、先に単語が呈示されたことによる学習効果が見られなかったものの、日本語単語完成課題ではその効果が見られた。 本年度はこれらに加えてこれまでに収集したデータに基づき、日本人大学生の英語と日本語単語の処理の違いについて総合的な考察を加えた。
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