随伴性に対するバイアス認知の、自然発生的ストレスに対する防御効果を調べる追跡調査を行った。また、実験データについて、新しい角度から再分析を行った。 (1)実験データの再分析 客観的に非随伴性の事象の経験が、後の反応-結果随伴事態における学習課題にどのような影響を及ぼすかを調べることを目的として行った実験について、当初は負の抑うつ的説明スタイルによる個人差特性が後続の学習阻害を左右するものと予測されていた。結果は予測するような方向にはあるものの、統計的には意味のある差異は認められなかった。そこで、先行処置の非随伴性に対するバイアスの有無の観点から再分析をした。随伴性のΔP評定値が0の者をバイアスなし群、プラスの方向にバイアスを示した群を正のバイアス群、マイナスの方向にバイアスを示した群を負のバイアス群として、先行処置を受けなかった統制群とともに、テスト課題の遂行を比較した。その結果、統制群とバイアス群に比較して、バイアスなし群は有意に遂行が遅滞していた。 (2)追跡調査 昨年度の被験者には、追跡調査の依頼をしておいた。実験終了後、大学の期末試験が終了した時期に、郵送により質問紙調査を行った。調査はストレス反応質問紙であった。実験前に測定したストレス反応と、期未試験終了後のストレス反応の変化量を従属変数として、実験時に測定された随伴性判断のバイアスが効果を有するかどうかを調べた。その結果、負のバイアス群にストレス反応の増加が認められた。反応しない方が効果があるという認知的バイアスを示す者は、自然発生的ストレスに対して有効な対処方略がとれず、ストレス反応を増加させたものと解釈される。
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