研究概要 |
平成11年度は、ハトを被験体として、確率事象の推定が可能か否かを調べるために、偏った見本刺激による遅延見本合わせの手続きを用いた場面を構成し,この課題を構造化した場合と構造化しない場合の効果を検討した. この手続きでは,三つの反応用のキイのうち、中央のキイに見本刺激(赤または緑)が呈示され,これをつつくと見本刺激は消え,左右のキイに赤と緑の比較刺激が呈示された.この時,見本刺激と同じ比較刺激をつつけば,3秒間の餌箱の呈示で強化(正答)され,試行間隔(10秒)ヘ移行した.誤答の場合には,3秒間のタイムアウトの後,試行間隔へ移行した.基礎生起比率は,ここでは見本刺激の偏りであり,見本刺激の偏りを2条件(p=0.9とp=0.7)設けた.この手続きのもとで、構造化条件では,10試行を1単位とする訓練(構造化された訓練)を1セッション当たり6単位行った.各単位間には1分間の暗間隔を挿入した.一方,非構造化条件では,60試行の訓練を連続して行った.各条件とも,正答率が安定した後,見本刺激を呈示せずに、比較刺激のみを呈示するテストを行い,見本刺激の推定がどのように行われるのかを検討した. この結果、テスト場面での刺激の選択は、構造化条件では,見本刺激の割合からかなり逸脱し,見本刺激の偏りに対応しているとはいえなかったが,非構造化条件では,見本刺激の割合におおむね一致し,正確な推定がなされたといえる.この相違は,構造化それ自体の問題というより,各単位間に設定した1分間の暗間隔が妨害的に作用した結果とも考えられるので,こうした手続き上の問題点を改善した上で,構造化の効果を検討する必要がある.
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