研究概要 |
1.″Point-Lights-Walker (PLW)″図は、歩行者の関節部位に取り付けられた光点群の動きでもって歩行者の身体運動を表現するものである.単なる数個の運動点群からなぜ明瞭な男・女間老人・若者間の識別がなされ得るのか、その手がかりは何かを調べるのが本研究の目的である.海外で進められている研究のすべてが歩行者側面からのPLW図を基にしているのに対し、より長時間の記録とより精密な解析を可能にする歩行者背面PLW図による年齢とGender認識のメカニズムを解くが本研究の特色である. 2.室内歩行訓練器上を一定速度(時速1〜3km)で歩く人の背面にLED光点を両肩・両腰・両膝・両踵の各相当部位に取り付け、8光点PLW刺激図を作成した.Actor(男性4名女性4名,年齢範囲18〜62)のPLW図を観察した大学生400名(男性194名、女性206名)から性別と年齢判断の結果を得た. 3.結果から、(1)Actor性別判断は平均72%、特に高年者においては80〜90%の正答率が得られた.肩と踵間に生じるリズミカルな運動連係パターンと年齢判断との間に密接な関係が認められたことから、高年者性別判断の高正答率解明の有力な手がかりとなった.(2)PLW構成運動点間の相対的位置関係をわずかにずらすことでActor性差・年齢判断に歪みが生じることから、PLW図構成光点間空間配置と加齢化現象との間の密接な関係が認められた、(3)PLW図の性差・年齢信号検出については,男性actorに対しては女性観察者が、女性actorに対しては男性観察者がより優れた信号検出力を示した. 4.以上の結果から、非言語的コミュニケーション機構は(1)actor自体に備わる動作特性(2)PLW図により表現される動作特性、(3)観察者に備わる信号解析特性の3側面から追究される必要を生じた.
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