本年度は、認知発達モデルの構築の基礎資料の収集とモデルのツールの検討を目的とした。モデルのツールは、Elmanのをパソコンに移植し、仮説的な状況で作動させた。基礎資料に関して、生物の認識は、生物の領域の存在論的区別の特性を明らかにするため、ウサギを例に、実物、ぬいぐるみの写真、漫画的な線画を刺激とし、それぞれ衣服の有無の条件を与え、3-6歳の幼児と大学生合せて67名に、摂食、生殖、成長等の生物的機能、話す、考える、感情を持つ等の心理的機能を持つか否か、これらの機能を示しておかしくないかの回答とその理由を聞いた。3、4歳児は生物的特性を実際のウサギには理解しているが、心理学的特性を付与することも示した。ぬいぐるみや漫画には生物学的特性を付与しないが、心理的反応を付与する傾向がみられた。以上、刺激の特性や状況により同じウサギでも生物、無生物、また人間化してみたりと見方を変えることが示された。心の理論に関して、Wimmer&Perner課題を3歳児が失敗するのは隠す場所と隠される物との関係が不明確なためかを確かめるため、3、4歳児併せて41名に物語を画用紙で表示したものを隠す戸棚を開いて紙で作ったチョコレートを隠せるようにしたものを用い、これまでの課題とものをその場所に隠す必然的理由を明示する群と比較したところ、3歳児の成績は改善しなかった。次に記憶の問題を確かめるため、第一実験と同様の群に隠す順序を正、逆にした課題を3、4歳児27名で検討した。その結果、逆順序が物語性の有無にかかわらず、3歳児でも容易であることが示された事から、心の理論課題に成功するには記憶の問題が大きいことが示された。言語の獲得における相互排他性の制約について、3-6歳児に対象物を知っているか否か、対象を用いる文脈の有無、日本語と外国語ラベルという条件で調べたところ、相互排他性は文脈如何で適用されたりされなかったりすることが示された。
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