本年度は、幼児期初期の他者の内的特性の把握方法と行動予測能力の発達を明らかにする為の実験案を決定する為に、2つの予備実験を実施した。いつもネガティブ行動をする子、いつもポジティブ行動をする子などが登場する一連のアニメを作成した。最後のアニメでは、登場人物が以前とは異なる行動をする内容とし、その際の子どもの反応を分析した。 予備実験1:対象3歳児20名。一連のアニメを見ている際の様子をビデオカメラで撮影し、登場人物が以前とは異なる行動を取った時の子どもの表情や言動など自発的な反応を分析した。実験材料としてのアニメは、子どもたちを引きつけ、有効であることがわかった。しかし、自発的反応はほとんど見られなかった。 予備実験2:対象3歳児40名。予備実験1をふまえ、自発的反応だけでなく、登場人物および最終場面で以前と異なる行動をしていた者の有無などについての質問を取り入れた。その結果、3歳児は、他者の個別の行動を記憶し、それに基づいて行動予測を行うのではなく、他者の個別の行動をネガティブ特性とポジティブ特性の大枠で概念化し、それに基づいて、他者の内的特性を把握したり行動予測を行ったりするであろうことが示唆された。 今後の課題:実験材料のアニメ、および、予備実験2の実験方法の有効性が示された。今後、年齢幅と被験者数の拡大により、発達的変化を明らかにしたい。しかし、言葉の使用の難しい2歳以前の幼児に対する実験案をさらに工夫する必要がある。
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