これまでの2年間の研究では、大学生および中学生を対象に、完全主義傾向を測定する質問紙を作成し、母親の性格特性ならびに養育行動が子どもの完全主義の形成に及ぼす影響について検討してきた。その結果、母親の完全主義傾向が強いと、子どもを支配したり、子どもに完全を促したり、子どもに神経質に対応したりする養育行動が強く現れ、それらが子どもの完全主義傾向を助長することがほぼ明らかになった。そこで、本年度と来年度の研究では、発達の最初期に当たる幼児を対象に、完全主義の形成に及ぼす母親の性格特性ならびに養育行動の影響について検討することにした。本年度はそのはじめとして、幼児の完全主義傾向を測定する質問紙を作成し、その信頼性と妥当性を確認した。 幼児の完全主義傾向を測定する方法として、本研究では幼稚園の保育士による評定を採用した。昨年度の研究で作成された中学生用の完全主義傾向測定尺度ならびに桜井(1997)による小学生用の完全主義傾向測定尺度を参考に、(1)完全への願望、(2)結果へのこだわり、(3)高すぎる目標、という3つの下位尺度から構成される評定質問紙を作成した。各下位尺度は評定の簡便さを考慮して3項目ずつとした。妥当性を検討するために、園児の完全主義傾向を直接評定する1項目も質問紙に加えた。また、同じクラスを担当する保育士が2名いる場合には、両者に評定を依頼し、評定値の間の関係を見ることによってさらに妥当性を検討した。3つ目の妥当性の検討としては、一部の園児の母親にも自分の子どもの完全主義傾向の評定を依頼し、保育士の評定との関係をみることによって行われた。分析の結果、保育士による園児(幼児)の完全主義傾向の評定質問紙は、ある程度の信頼性(内的一貫性)と妥当性を有することがわかった。
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