本研究の目的は、親(とくに母親)の性格と養育行動が、子どもの完全主義傾向の形成にどのような影響を及ぼすのかを検討することであった。主な研究結果は以下の通りである。 研究1では、大学生を対象に、まず母親と父親の完全主義傾向と自分の完全主義傾向を評定してもらい両者の関係を検討した。その結果、母親の完全主義傾向と自分の完全主義傾向の間にプラスの関係が認められた。そこで、ターゲットを母親と自分に絞り、同じく大学生を対象に、母親の性格と養育行動ならびに自分の完全主義傾向を評定してもらい分析を試みた。その結果、母親の短気、完全主義傾向、厳しさといった性格特性と子どもをコントロールしたり、生活面で完全を求めたりする養育行動が、子ども[大学生]の完全主義傾向にプラスに影響していることがわかった。 研究2では、中学生を対象に、完全主義傾向測定尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検証した。そののち、この尺度と母親の性格ならびに養育行動を測定する尺度を同時に中学生に実施し、両者の関係を検討した。その結果、母親の完全主義傾向、しつこさ、厳しさといった性格特性ならびに子どもをコントロールしたり、生活・学業の両面で完全を求めたりする養育行動が、子ども[中学生]の完全主義傾向にプラスに影響していることがわかった。 研究3と4では、幼稚園の保育士と母親に協力を求め、幼児の完全主義傾向と母親の性格ならびに養育行動の関係について検討した。幼児の完全主義傾向の評定は保育士と母親に依頼し、その信頼性と妥当性を確認した。分析の結果、母親の完全主義傾向ならびに生活面で完全を求める養育行動が、子ども[幼児]の完全主義傾向(主に母親による評定値)にプラスに影響していることがわかった。
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