インクルージョン場面において、集団を構成するすべての児童・生徒の個別の指導計画を遂行するためには、従来の分断型ではなく、社会という文脈の機能の分析が必須となる。 本研究においては、発達検査、学校や幼稚園における観察、保護者や担任教員等との面談等の従来のアセスメントに加えて、集団における子どもの社会的行動への介入の効果を多層ベースラインでサインと、またこれに基づく構成員の行動の変化を随伴性の時系列分析によって検討した。 まず、機能アセスメントに基づいた集団指導において、構成員の強化随伴性の相互作用の分析から、子どもの行動を維持する変数としての他児の行動の影響を検討した。 次に、対象児の得意なあるいは好みの行動の機能アセスメントを実施し、オペラント行動の自発を促進する条件の検討から、社会的行動への介入変数としての正の行動支援の介入計画における重要性を指摘した。 また、仲間媒介法において、対象児をめぐる子どもたちにとって一番負担が少ないと考えられる仲間モデリング法を機能アセスメントに基づき実施、有効性を確認した。 さらに、学校場面への適用も考慮に入れ、社会的行動の促進を課題従事場面への仲間モデリング法の導入によって検討し、個別のスキルを如何に長期目標の観点からとらえ直さければならないかという検証をおこなった。 最後に、自閉的傾向や障害が重度で集団における他者への動機づけが低い子どもたちへ介入法を検討するため、確立化操作としての行動連鎖中断法を導入した結果、他者への注目や模倣行動の形成に効果的であることが示され、モデリングや援助行動といったより高次の社会的行動の形成・促進に及ぼす影響についての検討が今後の課題として残された。
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