Harterの理論に準拠して、児童期から思春期の子どものコンピテンスを測定する尺度を作成し、その発達的変化、及び変化の要因について、主に幼稚園の年中時から中学校2年時までの追跡児67名、及びその両親と担任教師、さらに小学校4・6年、中学校2年時では該当学年の在籍児全員269名を対象とした資料に基づいて検討した。その結果は、以下の5点にまとめられる。 1) 日本の子どもでもHarterの枠組みに即してコンピテンスの様態を測定することは概ね妥当である。 すなわち、幼児用は学習、運動、仲間からの受容、母親からの受容、児童用は学習、運動、容姿、社交性、行い、自己価値、思春期用は学習、運動、仲間からの受容、容姿、行い、親友関係、自己価値からなる。 2) コンピテンスの発達的変化として、(1)一貫して低下する領域(学習・学校、容姿)、(2)変化しない領域(行い)、(3)思春期に上昇する領域(社交性)の3つのパターンが見られる。 3) 思春期においてコンピテンスの重要性認知が相対的に高い領域は仲間からの受容、行いであり、逆に運動の重要性認知は低下する。 4) コンピテンスの現実認知と他者評価の両親評価・教師評価とを比較すると、総じて教師評価との相関が高く、その傾向は思春期において顕著である。 5) コンピテンスの低下傾向の要因として、(1)子どもの現実認知と重要性認知との差が増大すること、(2)小学校4年以降ではコンピテンスの他者評価が子どもの現実認知に影響を及ぼしていること、(3)思春期における現実認知の様態には子どもの家族に対する捉えや自分自身の行動特徴の捉えを反映していること、つまりコンピテンスの現実認知の高い子どもは家族や自分自身の行動特徴を肯定的に捉えていること、などがあげられる。
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